台風前後 釣果観察レポート

台風が過ぎると、アジが増える?
— 東京湾・4つの台風の「前後」を釣果データで見てみた

📅 公開 2026年6月12日

先日(2026年6月3日)、台風6号で横浜の海づり施設(本牧・大黒・磯子)が休園・開園見送りになりました。その前後で「釣れる魚ががらりと変わった——イカ(シリヤケイカ)が終わって、アジが好調に転じた」という声を、あちこちで耳にしました。本当でしょうか? そして過去の台風でも同じことが起きていたのでしょうか。溜まってきた釣果データで、興味本位に確かめてみました。

1まず6月3日・台風6号の前後を見る

混雑した日ほど釣果(匹数)は増えるので、ここでは「来場者1000人当たりの釣れ具合」=釣果合計 ÷ 来場者数 × 1000で比べます。台風の前2週間後2週間(横浜3施設の合計)を並べると——

アジ シリヤケイカ
236 857 台風前 台風後 アジ ↑約3.6倍 223 85 台風前 台風後 シリヤケイカ ↓4割弱に

数値は「尾/1000人(来場者で正規化)」。横浜3施設の合計。

数字の上でも、体感どおりでした——アジは約3.6倍シリヤケイカは4割弱に。「イカが終わってアジが来た」が、はっきり出ています。ただし1回だけでは「たまたま」かもしれません。

2過去の台風でも「アジ↑」は起きていた

そこで、データのある期間(2025年2月〜2026年6月)で横浜の施設に実際に影響した台風を気象の記録から拾い、同じように前後を比べました。「関東接近」とされても、当日に施設が晴れで来場者の谷もない台風(8月の9号など)は“ローカルには無影響”として除いています。

台風(接近日)区分アジ(前→後)
6号 チャンミー(2026/6/3)直撃↑3.6倍
15号 ペイパー(2025/9/5)直撃↑1.8倍
22号 ハーロン(2025/10/9)直撃↑2.3倍
5号 ナーリー(2025/7/15)非直撃(対照)→ほぼ横ばい
台風前(×1) 台風6号 ↑3.6倍 台風15号 ↑1.8倍 台風22号 ↑2.3倍 台風5号 →1.0倍(横ばい) ×1 ×2 ×3 ×4
↓0.4倍
↓0.7倍
↓0.8倍
1.0倍
↑1.3倍
↑2倍
↑3.5倍
↑6倍+

横軸=アジの倍率(来場者1000人当たりで比較・横浜3施設合算)。色の濃さは下の§3と共通の目安です。

合算では、直撃した3つの台風すべてでアジが増え、まっすぐ通り過ぎただけの5号では横ばい。「直撃のあとにアジ」という気配が、4回ぶんでも見えてきます。

3ただし“施設まかせ”——どこでも増えるわけではない

面白いのはここからです。同じ台風でも施設によって出方が違いました。アジの前→後(1000人当たり)を施設別に並べると——

台風本牧大黒磯子3施設そろった?
6号(6月)↑3.8倍↑6.8倍↑1.3倍○ 全部↑
15号(9月)↑2.0倍↑1.8倍↑1.3倍○ 全部↑
22号(10月)↑3.4倍↓0.7倍↓0.8倍✗ 本牧だけ
5号(7月・非直撃)↑1.8倍↓0.4倍↓0.6倍✗ 本牧だけ
本牧 大黒 磯子 台風6号 ↑3.8倍 ↑6.8倍 ↑1.3倍 台風15号 ↑2.0倍 ↑1.8倍 ↑1.3倍 台風22号 ↑3.4倍 ↓0.7倍 ↓0.8倍 台風5号 ↑1.8倍 ↓0.4倍 ↓0.6倍

施設×台風のアジ倍率。緑=増・赤=減、色が濃いほど変化が大きい(上の色スケール参照)。本牧だけが4回とも緑。

初夏(6号)と初秋(15号)の直撃では3施設そろってアジ増。でも晩秋(22号)と非直撃(5号)では本牧だけが増え、大黒・磯子はむしろ減りました。一方で本牧のアジは4回とも必ず増えています(4/4)。本牧は3施設でいちばん大きく(来場者は大黒の約2倍以上)、合算の数字も本牧に引っぱられやすい——その本牧で毎回増えるのは、注目してよい点です。

4「イカが終わった」のは、台風のせい?

では当初の主役、シリヤケイカはどうでしょう。実はシリヤケイカを多く記録しているのは大黒だけ(本牧・磯子はほとんど記録がありません)。つまり「イカが終わった」は、主に大黒の話です。そして大黒のイカは台風後に確かに減っていますが——前の年の同じ時期にも、イカは同じように減っていました。シリヤケイカは春のイカで、毎年ちょうどこの初夏に旬を終えるのです。

⚠️ だから「イカ↓」の大部分は台風ではなく季節の交代と考えるのが自然です。台風が“その引き金を少し早めた”可能性は否定できませんが、データだけからは台風のせいとは言い切れませんでした。体感の「イカ↓・アジ↑」のうち、台風と結びつけやすいのはアジ↑の側、というのが今回の見立てです。

5どうやって調べたか

施設や季節をできるだけ公平に比べるため、いくつか工夫しています。
「1000人当たりの釣果」で比較 — 混雑日に釣果が増える分を補正(尾/1000人)。
台風は外部の記録で定義 — 来場者が減った日から逆算せず、気象の台風接近記録から選び、さらに施設データで“本当に影響したか”を裏取り(接近でも無影響なら除外)。
「季節のせい」を差し引く — 前の年の同時期との比較と、台風直前の傾向を延長した予想、の2つの物差しで、季節分を引いてもなお増えているかを確認。
魚の呼び名の違いに注意 — 施設で「イワシ」とまとめる所と「カタクチイワシ」と細かく書く所があり、単純合算は要注意。全施設でそろって数えられるアジを軸に置きました。

6正直なところ — これは「観察」です

⚠️ 調べられた台風は4つだけ(直撃3・非直撃1)。前の年と比べられたのは6号の1件のみで、因果——「台風が原因」なのか「たまたま同じ時期」なのか——は区別できていません。回遊魚の旬は年ごとに1〜2ヶ月ずれます。これからの台風でデータを重ね、「直撃のあとにアジ」が毎回くり返すのかを確かめていきます。今は予測ではなく、季節の便りのような観察としてお読みください。
⚠️ そもそも台風は「水温の変化・濁り・気圧・出水」など多くの変化の“束”です。「台風前後」と言っても、本当に効いているのは水温の変化かもしれません。試しに前後の水温を見ると、いちばんアジが増えた台風6号は水温ほぼ横ばい(+0.2℃)、逆にいちばん水温が下がった台風22号(-1.8℃)ではアジは全施設では増えませんでした。水温の上下だけでは、このアジの動きは説明しきれないようです。とはいえ濁りや海の動きといった他の要因までは切り分けられておらず、ここも今後の宿題です。
⚠️ もうひとつ、台風一過は魚の食い気が立つ“荒食い”が起きやすく、釣り人の狙いも変わります。「台風の後はとりあえず何でも釣れる」だけかもしれません。ただ、もしそうなら多くの魚種が一斉に増えるはずですが、季節差を引いて複数の台風で一貫して増えたのはアジが中心でした。そこが、このレポートでアジに注目した理由でもあります。

釣り人にとっては——

台風一過の直後、とくに本牧でアジを狙ってみる。そんな“手がかり”の一つになれば、と思います(保証はできませんが!)。

ここ数年、異常気象と思えるような荒天が増え、思うように竿を出せない日も多くなりました。でも、釣りに行けない日は、過去のデータから近い将来のチャンスを探す好機と考えることもできます。荒天で家にこもる時間が、次の一手を仕込む時間になるかもしれません。

そして——私のようなデータ好きにとっては、こんな考察が一つあるだけで、台風のあと本牧へアジを狙いに行くのが、ぐっと楽しくなります。答え合わせが当たればうれしいし、外れたら外れたで、また新しい仮説を考えるのが楽しい。結局のところ、このサイトについてに書いたとおりなのです——「たとえボウズでも釣りって楽しい! でも釣れたらもっと楽しい」。このレポートが、その“もっと楽しい”を少しでも増やせたなら、これ以上うれしいことはありません。

このデータ、あなたも見られます

本レポートは、毎日更新している公開データから作っています。気になる魚種・施設・条件で、ぜひご自身で確かめてみてください。

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🗨️ 感想・リクエストを募集しています このレポートは釣り初心者の目線で作りました。長く釣りをされている方には「当たり前」かもしれませんし、逆に「見当違い」かもしれません。そのどちらでも、先人の知見を教えていただけることが何よりの学びになります。「台風の後、実際どうだった?」「この魚種も見てほしい」等、𝕏 @sakana_datahookQ&A でぜひお聞かせください。
📎 付録:分析の参考データ(データ好きの方向け)

指標は「来場者1000人当たりの釣果(その期間の釣果合計÷来場者数×1000、尾/1000人)」。前後は各イベントの前後14日(当日除外)。季節控除は 前年同暦比(生比÷前年同暦の生比)と 直前トレンド外挿 の2基準。両基準が同方向のみ「頑健」と判定。n=4(うち前年比可は6号のみ)。

① 対象イベント(外部台風カレンダー)

台風接近日区分前年比
6号 チャンミー2026-06-03直撃(東京湾波2.5m・3施設休園)
15号 ペイパー2025-09-05直撃(神奈川に記録的大雨・竜巻)不可
22号 ハーロン2025-10-09直撃(東日本初の特別警報)不可
5号 ナーリー2025-07-15非直撃(対照群)不可
却下:9号クローサ(8月)=関東接近もDB上ローカル無影響

② アジ 1000人当たり釣果(尾/1000人・合算)

台風生比
6号236857×3.6
15号13062401×1.8
22号6931571×2.3
5号(非直撃)425419×1.0

③ アジ 施設別(前→後の倍率)

台風本牧大黒磯子
6号(6月)3.86.81.3
15号(9月)2.01.81.3
22号(10月)3.40.70.8
5号(7月)1.80.40.6

→ 直撃の6号・15号は3施設一致。22号・5号は本牧のみ。本牧は4/4で↑。

④ 施設ごとの魚種記録のかたより(全期間 合計尾数)

魚種本牧大黒磯子
アジ224,912101,05131,131
イワシ796,054085
カタクチイワシ1,75386,5982,782
シリヤケイカ159,417135

イワシ≒本牧/カタクチ・シリヤケイカ≒大黒。施設で記録の慣習が異なるため、横断比較は全施設で潤沢なアジ等に限るのが安全。解析:台風前後分析エンジン。これらは観察値であり、将来を予測するものではありません。

⑤ 他の魚種は?(一貫性で取捨)

アジ以外も同じ手順で全魚種を検証しています。カサゴは季節控除後に3イベントで増加が一致しましたが、回遊魚ではなく居着きの根魚で“増えた理由”の筋が異なり、施設別では弱い(揃うのは6号のみ)ため本文では扱っていません。シロギス・クロダイ・コノシロ・サバ・タコは台風ごとに増減の向きがバラつき、一貫した傾向は見られませんでした。ハゼや小型ベイト(サッパ・キビナゴ等)は単一イベントや少数ベースで、頑健とは判断していません。一貫性のなかった魚種は、こうして取捨しています。

データ:本牧・大黒・磯子の公開釣果(2025年2月〜2026年6月)を集計/解析:台風前後分析
※本レポートは釣果情報の観察に基づく参考情報です。実際の釣行は各施設の最新情報と安全を最優先にご判断ください。

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最終更新:2026年4月

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